BJJのファンダメンタルズとは何か? by ブドー・ジェイク (柔術スタイルマガジンに掲載)
世界中の柔術道場でよく耳にする
「ファンダメンタルズ(基本/原則)にフォーカスする」
一見、賢明に聞こえるこのアドバイスに対してほとんどの生徒は、疑うこともなく頷きます。
問題は…
BJJのファンダメンタルズって何?
4つの大陸にまたがる多くのBJJ道場を訪れた私は、テクニックには多くの共通点がありながらも、微妙な違いも多くあることに気付いた。
さらに、
芸術の側面、ガード、パスをする事、そして、MMAのBJJに重点を置く道場など、道場によっても力を入れるところに違いがある事に気づいた。
このように、多種多様な指導を受けた私は不思議に思い始めた。
インストラクター全員が「ファンダメンタルズ」の定義に同意するのだろうか?と・・・
探究心に火がついた私は、多くのインストラクターに
「BJJのファンダメンタルズまたはベーシックスとは何ですか?」
と尋ね続けました。
驚くことではないが、回答はみんな異なるものだった。
私にとっての 「BJJのファンダメンタルズ」 の定義とは、基礎は、決して変わらないということです。
この概念は、芸術の先祖が創り出した素晴らしい遺産として引き継がれています。
いや、ちょっと待って…
私たちは、本当に コンデ・コマ (本名:前田光世 グレイシー柔術の祖) がやっていたようにキムラをやっていますか?
アームバーは、カーロス・グレイシーやエリオ・グレイシーと同じようにセットアップできていますか?
違う視点から見るため、友人の一人でもある、数多くの世界チャンピオンの功績をもつカイオ・テハに同じ質問をしてみたところ、
彼は、
「ファンダメンタルズは決して変わらないという考え方は、よくある誤解だ。」
と即答し、続けて彼は、
「ファンダメンタルズが変わるのは、コンセプトが変わるからだ。力学が進歩するにつれ、私たちは常に改定し続けなければならない。私がモダン柔術について話しをするとき、ベリンボロについてではなく、改定されたファンダメンタルズについて話しをするんだ。オープンガードからクロスチョークのやり方まで。」
わかった。では、
不変の遺産を引き継ぐという考えについては置いといて、ファンダメンタルズは変化する、という考え方に焦点を当てよう。
何かが常に変化し続けているとき、ファンダメンタルズの定義をどう明確にすればいいのか?
多分、ファンダメンタルズがベーシックスと言われる所以は、シンプルな動きだからって事だよね?
カイオは即答した:
『クロスチョークについて言えば、現実では「ベーシックス」はそれほどベーシックではないということ。もしマウントからのクロスチョークがベーシックなら、ホジャー・グレイシーだけが全ての人をマウントからチョークできるわけじゃないよね。それを目に見えない柔術、またはマジックと呼んだとしても、現実的ではないよね。』
ベーシックスはシンプルなものではなく、常に変化し続けているという事だね。
この時点で私は、まだファンダメンタルズを定義する方法を理解しているとは言えなかった。
カイオの言っていることもわかるし、ベーシックスについての理解も深まってきた。
ベーシックスではないとは:
-ベーシックスは決して変わらないセットされた動きではない
-ベーシックスはシンプルではない
ファンダメンタルズの適切な定義を理解するため、世界チャンピオンで、AOJアカデミーのオーナー、ギリェルミ・メンデスに同じ質問を投げかけました。
彼は、
「私たちにとってのファンダメンタルズとは、柔術をはじめた人が最初に学ぶ、基本的重要なポジションのことを指しているんだ。クローズドガード、サイドコントロール、マウント、そしてバック、これらはピラミッドでいうところのベースとなり、柔術アートについてより理解を深めていくと、自分自身の柔術のスタイルを組み立てるのに使える、多くのバリエーションと異なる動きを学び始める事ができるんだ。」
ギリェルミのコメントは、理解するのに十分な回答でした。
基本は、私たちが最初から行う動きです。
そして、メジャーなポジションごとに基本的な動きがあります。
しかし、
繰り返しになりますが、これに伴う問題は、インストラクターが異なれば、異なる動きに集中する可能性があるということです。
それは、BJJの世界全体の基本(基礎)について普遍的な理解がないということですか?
私はこの問題について強い意見を持つであろう、誰かに連絡をとりたかったのかもしれません。
多分、それほど伝統的ではない人物…
あぁ、そうだ!
10thプラネットの柔術創始者エディ・ブラボーに電話をかける事にしました。
彼もカイオの意見に同意し、
「BJJのファンダメンタルズは常に進化しているため、
何であるかを定義するのは非常に難しい。」
と述べた後、
エディは、カンフーの興味深いアナロジーを例に問題について説明してくれました:
「ロックダウンは、10th プラネットのファンダメンタルズの一部として考えられているが、これはほとんどの伝統的なBJJ道場にはないんだ。柔術には多くのスタイルがあるが、すべてのスタイルには独自の基本のセットがあると私は思っている。カンフーにも非常に多くのスタイルがあり、それぞれのスタイルには独自の基本のセットがあるようにね。」
わお!
私はBJJのスタイルの違いについて、中国武術と比較することを考えたことがありませんでした。このアナロジーは好きだけど、詠春拳が太極拳と違うのと同じくらい、10thプラネット柔術がアトス柔術 (Atos Jiu jitsu) と違うとは思えない。
もちろん、BJJが100歳くらいしかないのに対して、中国武術は1000年をはるかに超えている(誰に尋ねるかによりますが)。という違いはある。
有名なBJJ選手の歴史をたどると、彼らの多くがキャリアを通して1つ以上の柔術道場に所属していたことがわかります。これは、(人によって運営されている)組織がメンバーをまとめることがいかに難しいかを示しています。
アートの長い歴史を見てください。通常、しばらくするとトップの選手たちは、関係の違いや、お金、または権力を求めて、自分の道を歩み始めます。
新しい組織が生まれたとき、他よりもある分野に少し重点を置くのは当然の事です。したがって、一般に受け入れられている慣習として始まったものが、芸術のさまざまな側面を強調するさまざまな「派閥」に分裂することはよくあります。
ありがたいことに、BJJにはムンジアルやADCCなどのイベントがあり、最高の選手を集めて、彼らがどのようにマッチアップするかを確認する事ができます。これは、他のアートでは見られないでしょう。
BJJの基本が何であるかを理解する助けをしてくれた カイオ・テハ、ギリェルミ・メンデス、そしてエディ・ブラボーの友人たちに感謝します。
これが今日の私の基本(基礎)の定義です:
ファンダメンタルズは基本的なBJJのポジションから行われる繰り返しの動きですが、それらは常に変化し続け、道場によって異なります。
道場によってファンダメンタルズが異なるのは、
良いことですか?
悪いことですか?
一部の保守派は、「実際の」BJJは一つだけであり、以前と同じように行動する必要があると言います。伝統的な武道で問題がどのように扱われるかです。
伝統を維持することには多大な価値がありますが、有効ではなくなるという実際のリスクもあります(ただし、有効性を決定するために選択した場合)。
私個人の意見としては、多様性は良いことだと思います。武道の生涯の生徒として、私は新しい道場を訪問し、そのインストラクターがどの側面にフォーカスするのかを見るのが大好きです。
BJJは、一生の価値を超える研究に満ちた芸術です。すべての面で同等に優れている人を見つけることはまれです。より一般的なのは、いくつかの側面を深く理解しているインストラクターを見つけることです。
私はバランスのとれた格闘家になるように努力し、世界中で最も深い知識を持つ人々を探し続けます。
そして、新たな発見を今後の指導やブログ投稿で皆さんと共有したいと思っています。
【翻訳】田中恵里子